センダード文化喫茶

この街で暮らす日々。

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LOOP3-1

05月28日(水)23時31分
例によって三ブログ共同企画、
3巡目はあきなり先発です。

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急行魔列車、それは現世と冥府の循環線。
ひとたび乗れば、決して帰る事の出来ぬと云う。
無論、人間ならば、の話です。

「サイは、進路希望出した?」
「週明けまでだから、まだ書いてなぁい」

カランとサイは魔界第三高等学校の二年生。
不浄の魂を灼く煙も死者の吼える汽笛も、いつもの通学風景にすぎません。
スカートの丈、髪留めの色。
周りの事よりも、ささやかなお洒落が大事なお年頃。

「ねえ、カオに彼氏できたってマジ?」
「あ、見た見たー。五組のヤクオ君。手ぇ繋いで歩いてたよ」
「ええッ、超ラブラブじゃん超羨ましいんだけど!」
「いいよねぇー」

三途の川は通過駅。
八熱地獄の猛火が点々と遠くに並びます。
けれど、やはり二人にとって別段大したものではありません。

「カランちゃんとこは共クラだから、男子いるじゃーん。あのバスケ部の人、うちのクラスでも人気あるよ」
「アイツ絶対駄目だって! 顔は良いけど、色悪いし息臭いし。マジ無理ちょー無理」
「うぅん、ゾンビだもんねぇ。そうだ、キモン君は? 仲良かったんじゃない?」
「あいつさあ、みんなでジュース飲んでて、あたしから回したらいきなり逃げんの。ありえなくね?」
「ミイラの人に水気と火気は厳禁だと思うよー」

大きな十字架のある駅に着き、白い服をきた人間が沢山降りて行きました。
二人の家はまだまだ先。
気にする事なく、お喋りは続きます。

「この前の変な手紙、誰だか判ったの? 『君の帰りを待っているよ』とかってやつ」
「三年の蜘蛛男さんだったよ。全然話とかしてないんだけど、校門の前で待たれたりしたから、先生に云ったのー」
「わ、キモーい! 超キモい!」
「上級生でも家に誘われて帰って来ない人いるから、先生から話してくれるって」
「マジやばいじゃん。気をつけなよ…ってか、足多い系って思い込み激しいヤツ多いよね。マジ勘弁」

空の大孔ぐるり廻れば、果てなく揺れる彼岸花畑。
真紅の海を抜けたら、降車駅はもうすぐです。

「あー、皆サイアク。もう人間界で探すしかないかなあ」
「でも、連れて帰ったら死んじゃうよぉ」
「それ超ウケるんだけど! あはははっ」

闇の虚空を切り裂いて。
魔界に花咲く乙女を乗せて。
急行魔列車、今日も走ります。


------

後書き的なものはコメント欄で。
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LOOP2-2

05月15日(木)01時07分
共同企画、2回戦2番手でございます。
早くも期限オーバーの僕☆
(すいません)

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目眩がした。
鏡と鏡と鏡の中で、僕は必死に鏡を覗く。
やっぱり其処には"何一つ"、映っていなかった。

──僕以外の動くものは。

硝子面から体を離して溜息を吐く。
何処もかしこも全身できらきらと陽光を反射するビル群の真中、白いタイルの路面へ直に座って煙草を咥えた。
視線の先では街路樹の葉が白々しい碧を放ちながら動かない影を貼りつけている。揺らめいた煙が細い青空に吸われてゆくのを、ただ茫然と眺めた。

ほんの四時間前。今朝の九時までは、全てが当たり前に存在していた。
テレビの音で目覚め、振り返らずに目を上げる。ベッド側の壁に掛けてある楕円の木枠を見つめた。鏡越しの恋人が出勤の為に身支度を整える背中があった。
反転した世界に生じる僅かな違和感に身を委ね、思考を遊ばせる。
 
何もかもが本当は、この小さな世界の方にあるのではないだろうか。
振り返ったら本当は、何一つ温度を持たないのではないだろうか。

幼い頃から幾度となく繰り返した、それはいわば他愛のない独り遊びだった。その筈だった。
ぱちん。
突如耳の奥底で微かに弾ける音がして。
急激な静寂に飛び起きると、誰もいない部屋で点いたままのテレビが無人のスタジオを映し出していた。

向かいのコンビニ。
その隣のマンション。
大通り。
地下鉄の駅。
店、会社、他人の家。建物と云う建物。
入れども入れども蝿一匹見つける事が出来ずに彷徨い続け、結局オフィス街の中心で途方に暮れたのだった。蒼い箱の中身が残らず灰と化した頃、諦めた訳ではないものの虱潰しに走り回る気力はとうに失せていた。


店の棚から取ったパンをその場で齧った。
知らない学校の教室でビールを飲んでみた。
ボーリング場のレーンを土足で疾走してみた。
丸善で難しそうな本をピラミッドに積み上げた。
駅のホームから線路に降りて新幹線の足元を蹴った。
スターバックスのカウンターへ入って勝手にコーヒーを出し、クリームを山盛りに乗せてメガフラペチーノを作った。

カップを手に店を出ると、街は茜色に染まっていた。
風の音もない世界で太陽だけが変わらず動いている。酷く不思議な心持がした。

家に帰る頃にはすっかり夜になっていた。
電気を点けて座る。リモコンに手を伸ばしかけて、やめる。
所在なく淀んだ指の先に、ふと目が止まった。テーブルの中央で、布巾が不自然な盛り上がりを作っている。
そっと摘んで持ち上げた。
おひたしの小鉢と焼き魚の皿が並んでいる。ラップの上から触れると、まだほんのりと温度を保っていた。

──これは。

相変わらず物音一つない部屋の中を必死に見回した。視界の端でちらりと動くものがある。

──鏡。

化粧道具の小箱に乗せた机置きの鏡、ベッドに腰掛けた君が映っている!
振り向く。しかし、布団の上には何の姿もない。駆け上って、壁掛けの鏡を覗いた。僕の後ろに、君が!
唇が動いた。
しかし、僕は君に届かない。叫べども壁を叩けども。
その言葉、温度、何一つ確かめる術がない。

何か云っている。
小首を傾げて、少し不思議そうな顔をして。
君が、僕に笑いかける。


------

後書き的なものはコメント欄で。


LOOP3

05月06日(火)01時53分
この創作は、「駄文と戯作の館」「北辰駅五番線」との
共同企画となっております。LOOP1~2は、ブログ内リンクからどうぞ。


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夏の一幕。表に出さず、僕はひっそりと歯噛みをする。
ブラインドから差し込む陽がほんの少し傾いていた。何事もない顔を装って口のケチャップを拭う。

「こっちも」

テーブルに肘をつく君が少し身を乗り出していて、僕は二枚目の紙ナプキンをぷるりと膨れた唇に当てた。
ふにゃりとした弾力。活きたピンクの光沢。
鉱石とは程遠い事実を幾度かなぞって、僕は再び味噌ラーメンで頭を埋めようとする。海苔も入った方がいい。いっそ味噌でなくてもいい。白茶けた不安を追いやるべく、思い出せる限りのラーメンを脳の内側に並べた。
一風堂。
味よし。
仙台っこ。
天一、東龍、山頭火。
萬寿山の上海ラーメンも捨て難い。

「またラーメンの事考えてるでしょ」

とんがらせた口許、声に吸い寄せられて、顔を上げた。

「やっぱりお見通しなんだな」
「まあね」

そうやって。いつも。
また繰り返しそうになる思考回路が、急に止まる。

「どうした?」

僕を見る君の笑顔が明らかに温度を失っていた。
ゆるゆると硬度を上げて、それはまるで作り物のよう。

「あたしはね」

作り物の君は僕の問いには答えず、滑らかな動きでスプーンを取り冷めた珈琲を掻き回した。からんと透った音がする。

「あたしは、ランドセルの中にはいつだって『ほんとう』しか入れなかったよ?」

その時、遠くから微かな音が聞え始めた。
向かい合う君の、艶やかなショートボブに。
控えめなアイラインとマスカラで縁取られた瞼に。
その中の、硝子玉のような漆黒の瞳に。
音の速さで、世界が吸い取られてゆく。
テーブルも、マスターも、生温い空気も飲み差しの珈琲も全て。
がらんどう、と感じる為の空間さえ分らない場所で、君の声は酷く遠い耳元で響いた。

「引っ叩いても、よかったのに」

ああ、とただ嘆息する僕の微かな動きさえ、徐々に現実感をふるい落として消えていった。



嘗て、其処には椅子があった。
だが、今は、もう、無い。
だから、誰も座れない。



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プロフィール

秋成きよる

Author:秋成きよる
杜の都の駄目オトナ。
土木関係の会社で設計部署の下っ端をしつつ、
某携帯コンテンツのライターをしています。
ベルギービールが大好きで、
焼酎の味は未だ解りません。

一応本館(携帯サイト・PC閲覧できます)
<センダード戯人街>
写メ日記(気まぐれに更新)
<杜色雑記帳>




すぱむっぽいコメントやトラバは容赦なく削除させて頂いております。ご了承下さい。

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